今回は『地域福祉の理論と方法』です。実際の出題数は10問と多いので、しっかり要点を抑えていきましょう!
『地域福祉の理論と方法』について(要点)
地域福祉とはコミュニティーソーシャルワーク(地域を基盤とするソーシャルワーク)です。つまり コミュニティーソーシャルワークは、ソーシャルワークの一つですから、まずソーシャルワークとは何か、抑える必要があります。ソーシャルワークは、『社会福祉』を制度、政策と見る場合、そこで解決できない課題を地域の人的、環境的資源をもってアプローチしていくことです。(長崎和則さんのソーシャルワークオープンゼミナールにおいて、細かく見ることができますので、深く知りたい方はご確認ください)
その過程では、個人に着目してアプローチする手法も当然とられているため、
ケースワーク、グループワーク、コミュニティオーガニゼーションに関する諸アプローチの知識ももちろん重要です。
例題
地域福祉におけるコミュニティソーシャルワークの意義をまとめ、具体的な方法と留意点について、自分が暮らす(働く)地域の状況と結びつけて述べなさい。
ポイント
- 歴史的背景を踏まえる
例えばイギリスでコミュニティソーシャルワークの概念が出てきた背景には1960年代に進められようとしたシーボーム報告によるコミュニティケアの挫折があります。 それだけ地域を基盤とした縦割り行政を排したサービス提供が難しいということ。
- コミュニティーソーシャルワークだからといって、ケースワークと戦わないこと
作成例
地域福祉におけるソーシャルワークの発展の仕方については、アメリカ、イギリスで若干の違いがある。元来、ソーシャルワークは利用者個々のニーズを解決するとともに、個別ニーズの発生源である社会環境を改善し新たな社会システムを形成していくことが全体像であるが、アメリカにおいて、リッチモンド(Richmond,M.)はケースワーク理論を優先的に体系化した。その後に同国自体が医学モデルに準拠して、理論化したこともあり、ニーズを根本的または全体的に対応しようというコミュニティワーク援助との機能的分離は進行し、ケースワーク・グループワーク・グループオーガニゼーションというソーシャルワークの3分法で発展していくことになった。一方でイギリスでは、長い伝統であったコミュニティケアを起源であったが、バークレイ(Barclay,P.)報告以降は地域を基盤として個別ケアを行いながらも、ソーシャルケアプランナーとしての役割も期待したコミュニティーソーシャルワークという新しい考え方が示された。日本では、大橋兼策の理論において、バークレイ報告以降のソーシャルワークの発展やICFの考え方も取り入れ、ソーシャルワーク実践の統合的な方法として構造的に定義している。例えば杉並区では、同法人内の地域支援課地域福祉推進係が中心となってコミュニティーソーシャルワークを推進している。具体的活動の一例として、区内を6エリアに区分けして区民が集まることのできる『きずなサロン』の運営に協力している。サロンの担い手を希望する方には、同係へ直接連絡をし、運営の方向性や補助金の申請、会場提供の相談等を適宜受け付ける流れである。子育て・介護・世代交流等と、年齢やその目的に応じて集まることのできる場所の確保が地域内でのより強固な繋がりへ発展させることが目標だと推察する。しかし、その動向は今ひとつわかりにくいものであり、各サロンでどの程度の参加者がいて、この事例を通じて見つかったニーズをどの程度福祉計画レベルに盛り込まれているか等は把握できない。公助の部分に視点を移すと、子育て支援において同区では子育てバウチャー制度(名称、『子育て応援券』)を導入しているが、展開状況は『杉並区子ども・子育て支援事業計画』において数値的振り返りと今後の方向性が示されている。特定非営利活動法人日本地域福祉研究所によれば、『地域自立支援に当たって、コミュニティソーシャルワークの機能はその全てが一つの事例に必要な場合もあれば、必ずしも必要でない場合もある』とあるが、より豊かな地域間の支え合いを展開するために上述した質・量的調査や分析を踏まえたさらなる互助、公助の有り方や方法の見直しが必要であろう。(©mhotsuma 無断転載禁止)
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