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【コラム】ナラティヴ・アプローチを相談支援に役立てる方法

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コラム
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この記事を読んでわかること
  • ナラティヴ・アプローチと傾聴は、その具体的手法から根本的に異なる
  • ナラティヴ・アプローチを体系的にみられ、ソーシャルワークに応用したナラティヴ・ソーシャルワークについて学べます。
  • より深く学びたい方へ参考図書の情報が得られます。
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ナラティヴ・アプローチを相談支援に役立てる方法

今回は、ナラティブアプローチについて書きます。

ナラティブアプローチってよく聞くけれど、傾聴とどう違うのか?このよくある疑問はどこで形成されてしまったのか。

そして具体的にどう違うのか。

クライエント支援にどのように活かすことができるのか。

この効果測定はどこでできるのか。そんな疑問に、久保紘章さん, 副田あけみさん編著『ソーシャルワークの実践モデル―心理社会的アプローチからナラティブまで (川島書店)』、荒井浩道さん著『ナラティヴ・ソーシャルワーク―“〈支援〉しない支援”の方法 (新泉社)』を参考にしながらまとめていきます。

アプローチと傾聴は段階が違う

ある方と面接、面談をするときに、その人と話す態度そのものを傾聴として、

その話題の展開方法を〇○アプローチといいます。そう考えると、一、相談員としてその人の話を傾聴するんだけど、その内容の持っていきかた(その人への迫り方がナラティヴですよ、ということになります。)

ナラティヴ・アプローチの基本的な手法と種類について

荒井 浩道  (著) ナラティヴ・ソーシャルワーク―“〈支援〉しない支援”の方法 (新泉社)を参考にmind noteで作成

ナラティブアプローチの手法は、そもそも社会構成主義(ポストモダン主義)(=現実は人の影響を受けて変わりゆくもの、例えば「あの人は男らしい」というのは、その人が男らしいかどうかは別として、他者の評価によって形作られているといった価値観)という概念のもとで行われ、本人との語りの中の拘っている物語(ドミナントストーリー)に着目しながら、そのこだわりを薄くして、会話の中でその物語の異なる側面についても話しつつ、オルタナティブ(代わりとなる)物語を厚くするアプローチです。こう聞くと、なんとなく難解なイメージがつきます。また、このアプローチの工程では、拘っている物語に名前をつけて問題とされる物語と距離をとる(外在化する)ことで客観視したり、問題となっているはずなのにそれとは例外となる話を拾ったり(ユニークアウトカムの発見)しますが、これが全部今のクライエントに適応できるのかと考えると難しいと感じてしまう。

結局なんか素人には無理そうと、早々にあきらめると、なんか一般的に本人の主体性や語りを重視して話を聞く(つまり丁寧に話を聞く≒傾聴)みたいなことと解されていったのだろうと思われます。この書籍の著者も同様の文章があるので引用しておきます。

そして重要なことだが、ナラティヴはその理論的な難解さとは裏腹に、わが国のソーシャルワーク領域においては「専門的な援助」としてではなく、「非専門的な援助」という文脈で論じられる傾向があったと考えられるナラティヴは、自らを特徴づける「脱専門性」や「無知の姿勢」といったキーワードのために、非専門職による援助技法として受容されてこなかっただろうか。また、ナラティヴの利用者に視座に立つ実践スタンスは、たとえばF.P.バイステックの「傾聴」や「受容」といった援助者の価値論/態度論とほぼ同義にとらえられてこなかっただろうか。そこで欠落しているのは、ナラティヴを対人援助の専門性を有した技術論・方法論として論じる視点である。

技法としてのナラティヴ
―ソーシャルワークへの応用に向けて― (荒井浩道)

難解な理論も広い目線で付き合えば実際の支援に活かせる!

本質は「支援する人」「される人」の関係を放棄して、こだわりをもみほぐすこと

例えば上の基本的手法をがっちり適応して、気合を入れてアウトリーチ(訪問面談)したときに、高齢で面談拒否ぎみのお相手に、「この問題をなんと名付けますか?」などと聞くのは明らかに不自然ですし、怒りを買う可能性すらありますよね。笑

なんでこうなるのかといえば、クライエントがクライエントとしてなる来談理由がネガティブである場合(クライエントがクライエントになることに納得していない場合、嫌々面談している場合など)は、理論通りの展開は難しいのだと考えています。

多様な相手によって、その理解と納得のもとに展開していくのがソーシャルワーカーだとすれば、中核となるこだわりの物語を「もみほぐす」姿勢が大切と思います。例えば、掃除を苦手として、ごみ屋敷にしているクライエントが、金魚の水槽だけはきれいに掃除しているのを見て「あなた、本当は掃除が好きなのではないですか」と話して本人の中核の物語を書き換えるのも横暴でしょう。つまりは、理論を中心としながらも、ソーシャルワーカーの専門性である非専門性に立ち返り(寺谷隆子先生)支援する。

具体的には「金魚、大切にされているんですね」などと入り、今片づけたくないとしている物語のわきに流れている一定のルールの逸脱(でも金魚の水槽は掃除している)の指摘を、クライエントそのものの不快感をあおらずに行い、代わりの物語の糸口を探る、マッサージのような会話のもみほぐしが必要と感じます

テキストマイニングでナラティブアプローチを量的・質的にワンランク上を目指す

面談で得られたデータを量的にも見ることで、客観性が高まる。

荒井浩道さんは著作の中で、ナラティヴアプローチによる面談においてのテキストマイニングによるエビデンスの構築について触れています。テキストマイニングについては、ナラティヴにかかわらず、分野問わず多くの場面で活用されています。

私としては、カンファレンスや、アプローチ手法問わずこの手法は相談支援には必須の技術と思います。

実際に例文を用意して、テキストマイニング(紙面の都合で共起ネットワーク、ワードクラウド分析のみ)してみる

あるケースカンファレンスの始まりの状況を架空で作成してみました。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)領域の利用者様を想定してみましたが、テキストマイニングを参考にすればどのような会議が展開されるのか、視覚的にもよくわかります。

[今日皆さんにお集まりいただいたのはAさんの病状のことです。Aさんの病状は癌のステージ5で、今後の予後に関しては本人の体力にゆだねられることになりました。しかしAさんは体調の関係もあり、今後について自分の言葉などで意思の表出が難しいと判断されたため、今回こうして皆さんに集まっていただきました。Aさんのこれまでの来歴を整理しながら、今の状態を生活面、医療的側面、近い将来の話を医療的側面ご家族様のお申し出などを参考にAさんの意思に近いと思われる表出をまとめていきたいと思います。今日はよろしくお願いします。]

共起ネットワーク分析 会議の始まりなので、医療度の高いAさんの要点と連帯を促す声かけが多くみられる
ワードクラウド分析 ゆだねるという言葉は今回の文章では1回の登場だが、同じ品詞の中ではスコアの高いものであり、
見えるかすると、本当に大切なことがわかる。

まとめ

ナラティヴアプローチのエッセンスを取り込み、検証を踏まえて支援を成長させる=ソーシャルワーク

今回の記事は、ナラティヴ・アプローチについてまとめてみました。気づけば、相談援助の初心者が無意識にとっている対応に似たものこそありますが、そこから一歩、踏み込んでいく所の工程では、物語をただ聴くのでなく、別の物語に肉付けをして本人の変容を促すとってもアグレッシブな側面も持っていることがわかりますね。同時に、これと似たモデルとして気持ちの差を取るストレングスモデルにもアプローチ方法はとても似ているとも言えます。いずれにしても、ソーシャルワークの基礎となる理論だろうと思いますのでしっかり押さえておきましょう。(ポストモダン、構造主義などは国試にも出ますよ!)

今回参考にした書籍

・ナラティヴ・ソーシャルワーク―“〈支援〉しない支援”の方法 (新泉社)

・ソーシャルワークの実践モデル―心理社会的アプローチからナラティブまで (川島書店)

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